JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

カミさんという生き物

 わけあって空いているカミさんの部屋を少し片付けている。ひょっとしたらでかい介護ベッドの類でも入れなきゃいけない状況になるやも、だからだ。
 収集癖を持つ主人のいない部屋というのは侘しいもので、一つ一つにどんな想いが込められているのかは全くわからないことだらけ。衣類はまあ押入れに押し込めば済むが、書籍やゲーム、CDの類。そして好きなタレントの記事のスクラップにいたってはどう扱っていいかわからない。何よりまめな文字で書かれたルーズリーフにまとめられたゲームの攻略にはこれまたどう対処すればよいやら。とりあえず彼女が帰ってきたとき困らないようにそのままにするしかない。

 何よりこれ、どうしよう?となっているのがカセットテープである。コサキン伊集院光のアップス〜ジャンク、開始時期のオードリーのオールナイトニッポンという貴重なもの。押入れに入れるったってうち2Kでそんなに収納ないぞ。なによりカセットだから思いっきりかさばってるし。というかどれくらい行動パターンが平成一桁で止まっておるのだ嫁よ。そう、彼女はMP3で録音するとか勉強も一切しなかった。自分はすぐにその辺調べて勉強するたちなのでその行動には理解に苦しんだ。そのうち勉強するようになるさ、と思ったがついぞ行動にも出なかった。
 いや、彼女はずっと時間を止めたような人だった。ゲームを買えば攻略本を買うし、そのために必死に古本屋を探しまわるような人だった。アップデートという概念が全くない人であった。これが子供でも出来ていたら変わったのかも知れないが、病であればいたし方がないし、彼女にとって時間を止めるほうが幸せだったのだろう。
 そういえば彼女は自分の写真を撮られるのを嫌がっていた人だった。なので彼女を撮った動画というのはもっと皆無なことに気付いて愕然としている。そういや今時は皆生き様を動画に残す習慣があるもんなのなあ。彼女自身はもちろん昭和で止まっている人なのでカメラなんぞ回す習慣すらなかった。
 動いているカミさんがもし残っているとすれば。「スナックボギー」というイベントでうまい棒目隠し当てをしたときの動画がもし残っていればそれだけだ。うわあ参ったな。

 人それぞれの人生はどこで時間を止めるかにかかっているかに思う。
 よく言われる「脱成長論」、それは国家レベルで論じる話じゃなくて個人それぞれの問題に思える。しかしカミさんの例は極端すぎって思うところもあるのだが。まあそれを長年尊重し許容し続けたのは自分であるから、
 「何この人凄い」
 とむしろ賞賛をするべきなのだろう。間違いなく。