JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

4つ上のオッサン

 仕事で旅に出た。
 下関。北九州。大分。鹿児島。熊本。
 3日間、合計したら1000kmくらいか。

 会社の、4つ上のオッサンとの旅だった。
 俺はひそかにこのオッサンに人間的に惹かれている所がある。

 このオッサンは消防団に入っている。
 年度末のクソ忙しいさなか、必死に仕事をこなす状況で夕方、ポツリとオッサンがつぶやいた。
 「昨日さ、朝から小火のあって結局休めんかったわ」
 その前日は、稀少な全員が休みの取れた日だった。おくびにも出さず、腐らず仕事をこなした上でその台詞を吐く姿を見て、「男はこうありたい」と思うだろう。

 自分はライブの次の日に疲れをできるだけ引きずるまい、と心に決めた。
 仕事をしながら音楽活動、というスタンスを表現するのに、二束のわらじという言葉がよく出る。
 二束じゃないのだ。わらじは一束しかないのだ。
 真の両立とは、お互いの活動によって高めあう状況を言うのだと痛感させられた。

 さて、このオッサンとの道中の会話はぎこちなく、しかしお互いの腹を割った話はとてつもなく楽しかった。
 互いに20代前半に
 「一目見てなんとなーく一緒になるってわかった女性」
 とずっと付き合ってるということが判明。
 最初の仕事の目的地は奇しくもおれが嫁にプロポーズした場所の近くだった。
 「いや、俺はプロポーズの言葉はなかったなあ、ずーっと一緒になるってわかってたからさ・・・」
 二人で互いの嫁を照れながら語った。

 車は会社が最近購入した中古車。俺たちの旅はその処女航海。何故かカーステに、ブルーハーツのシングルコレクションが入ったままになっていた。前の持ち主のものなのか?
 オッサン、俺。青春の歌だった。二人で聴いて九州自動車道を走り抜けた。見えない自由が欲しいわけでもなく、見えない銃を撃ちまくるわけでもなく。おそらく二人とも熱心には聴いてなかったのだけれど、共通言語があったのが嬉しかったのかもしれない。現場作業中二人とも、鼻歌で歌い続けた。

 旅と称したが実際は仕事で、行脚とも巡礼とも言うべき重苦しいものになるはずなのだが、それが旅と脳内に映ったほどなのだから、きっと楽しかったのだと思う。