JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

秘打白鳥の湖

 少年よ、君はよくやった。

 思えば俺にとって「野球」とは、やりたくてもやれなかったスポーツだった。
 物心ついた頃に「野球入門」が家にあり、ボロボロになるまで「ドカベン」を読みふけり、父親のソフトボールに何度もついていった自分。

 だけれど、俺は体の発育が悪かった。ついでにいえば極度の運動音痴でもあった。
 第二次性徴は高校1年の頃という特異体質でもあった。このブログのプロフの写真、中学生のじゃなくて高1の頃のなのですよ。この頃声変わりをしました。

 さらに言うと俺の出身校、青雲学園中学高校には野球部がなかった。「巨人の星」の学校と同名なのに。
 俺は玉拾いでも、マネージャーでもいいから野球がしたかった。
 野球同好会を作ろうとしていた名切君。
 ひょっとして自分が加わろうとしていたら、あの「部活でもやったら少しは変わるんじゃないの?」と先生にささやかれていた問題児だった俺が関わろうとしたら、風が変わったかもしれない。あの時勇気がなくてすまなかった。ずっと実はわだかまっています。

 いまだに、野球はやりたいけどやれないスポーツです。永遠のすれ違いはこれからも続くと思う。

 そんな俺にとって、水島漫画の存在はかなり大きいのです。
 ドカベンプロ野球編はファンタジーとして。いや、百歩譲ってドカベンVS野球狂の詩より先がファンタジーとして。
 水島野球漫画は自分にとってもはや史実です。
 野球をやりたいけどやれないもどかしさ、そして憧れが入り混じり。

 滑川総合高校の馬場雄治君。
 君は注意を受けた事をした。注意を受けたことは間違っていない。そこは社会のルールってやつだ。仕方がない。
 だが、俺にかなえられなかった夢を君はやってのけた。

 公式戦であの「秘打!白鳥の湖!!」のポーズが見られるなんて。
 俺も、やってみたかったよ。ありがとう馬場君。

***

 この流れで書きますが、水島新司漫画の最高傑作は「ストッパー」であったと思っています。
 雑誌の休刊で打ち切りと言う無念の終わり方ゆえ、水島さん自信では納得が行っていなかったのか。ドリームトーナメントで主人公三原新平をかなりぞんざいに登場させて退場させてしまっているのが残念なのですが、

・最初は左投げの超遅球を使うハッタリ型抑え、時折決め球に違反球
・でも実はめっちゃ足が速くてセンター守れてバッティングが上手い
・右で剛速球が投げられることが発覚(コントロールは悪かったが独自練習)
・巨大財閥の御曹司で最終的にオーナー兼1番打者兼センター兼ストッパーに
・オーナーだから契約の話とかもシビアに出てくる
・ライバルがメッツ岩田鉄五郎

 今、リアルな野球漫画として「グラゼニ」がかなり面白いのですが、この漫画が「ここを描くなんて新しい!」と評価されてる部分をストッパー、かなりやっちゃってます。埋もれた傑作です。是非一読を。
 多田野投手のイーファーストピッチや去年甲子園で東海大四の西嶋投手が見せた山なりスローカーブ、まさに三原の超遅球です。