「コンクリートから人へ」ということ
前職の話は書き足りない話があって。
この仕事をやっている最中に、総選挙があったのでした。
自分は土建業界でCADオペをやっていました。
まさしく「コンクリート」の仕事でありました。
さらに突っ込んで書くと、コンクリートのなかでも修繕の部類に携わる仕事の下働きでありました。
はっきり言えば、いわゆるコンクリート仕事を糾弾する社会運動員の皆さんも「でも、この仕事はやらなきゃいけないよね」ってセリフを吐かれる部類です。
待遇は、最悪でした。これ以上は恨み言になるから書く必要はないでしょう。
それよりか気になっていたのは、このコンクリート仕事の業界の、不思議と鬱屈した雰囲気でした。
世間は土建にどういうイメージを持っているか。そしてそのイメージが彼らをどう鬱屈させてるか。
都会の市民運動家が「無駄な道路を掘り返し」「田舎に無駄な道路施設なんてムダ」というセリフをネットで吐き散らすのには、不思議とそう悪いイメージはつかない。思えばこのセリフ、ここ何年来のマスコミも使う常套句だ。
思えば、これらの言葉は見えない圧力として、この仕事に従事している人々を押しつぶしてきていたのだろう。それらは負の呪いとなって、彼らを支配しているようだった。「この仕事しか出来ないのだから仕方がない」という諦念すら漂っていた。
土建屋が工事をする際にしなきゃいけないこと、まどろっこしい儀式ともいうべき手続き、どれくらいあるか知られているだろうか?膨大な現場写真、執拗かつ精密な数量拾いの地獄。
辞めた自分の前、実は数名が精神をやられて去って行っていた。
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さて、前職はその辞めた会社で出た失業保険で行った、職業訓練が発端でした。訓練学校から緊急雇用対策の職場を紹介してもらったわけです。
自分的にも気分は「コンクリートから人へ」。
そもそもなぜ自分がコンクリート系の仕事をやるようになったか、考えてみると小泉経済下でその手の仕事があったから、に他ならない。ちょうど時期は九州新幹線やら高速道路延伸やらが多数。そこにたまたまCADが出来た自分が派遣で行けた、という幸運。
大規模公共工事が雇用を創出する、というリアルをまざまざと感じる事が出来たものでした。
民主党政権は、どんな雇用対策をしているのでしょう?
・・・そりゃ、詳しくは書かないよ。どんな仕事だったかは。
だけど、まあかいつまんで書くとこういうことで。
「国が作ったシステムがあって、こいつが適正に運営されてるかわからんから企業を調査しようって話で、どうたらこうたら」
で、つまりアレだ。これはいわゆる「総括」というやつですか?
結局有益な雇用の創出とか考えもつかず、思いついた国民に与えるお仕事ってのが内ゲバごっこなの?
「コンクリートから人へ」、で出てきた仕事がそれかよ。左巻きの発想って凄いなあ、と思っているうちに総選挙。
自民党が圧勝。うん、そりゃそうだよね。
もしもっと本気で「人へ」の雇用創出を出来ていたら、市民間相互監視システムの構築とか本気でやってたんじゃないのかと思うとぞっとしてしまった。いやそれは、もしあの震災がなかったりでもしたら、インフラ整備的に進んでいたかもしれない。
陰謀論的な大袈裟な事を書いているようだけど、実際従事していたことは企業のつるし上げであったのです。ある意味監視的な業務だったのです。嫌なものでした。
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結局土建はやめて、ある製造業に転職が決まりました。
図面の形式が似ていた事が決め手になりました。
この職場の扱うもの、世間的なイメージは非常にプラスな業界です。土建で感じていた世間からの負の圧力などないに等しい。それだけで、どれくらい雰囲気が違うだろう。本当に雲泥の差。