JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

相克の家

 いつも一方的に話を始めるうちの母親は、コミュニケートというものを極端に嫌う。こちらの意見を言ってしまうとかんしゃくを起こし、口汚く怒鳴り声で罵り、そのままどこかに行ってしまう。
 小学校の頃には鼻血が出るまで殴られたり、首にロープ掛けられたこともあった。

 まあまあ最低な親というなかれ、まあ実際そう考える向きもあるが、そんな親でも親は親。

 こちらにさんざっぱら一日迷惑をかけて、ある案件を果たそうとしていた母は自分のちょっとの不注意でその案件を果たすのに失敗していた。しかも、金の入り用だからさあ大変だ。
 やばいな、不機嫌になるぞ。こちらがいかにして「あんたの不注意じゃない」と言っても訊く間も与えるまい。おおよそ予想通り物にさんざっぱら当たりながら「あきらめた、あたしゃもうダメだ」などと語気を荒げて親父に当たり始めた。ああ、またいつものアレだ。うん、アレだな。相変わらず、人間がする表情のなかでは最も醜い、本性のにじみ出た夜叉の顔をしている。

 …と、今日の出来事を振り返ってみる。
 いつこの親に、自分の抱えている気持ちを素直に伝えたりできるだろう?祖母の葬式のときだったか、少しばかりそれが出来たのだけれど。
 一生できないもんだろうかな。ひょっとしたら。

 自分の対人恐怖はここから来てるんだろう。
 だとしたらトラウマを与えた人間によるOKサインが必要だろうから、克服は永遠に無理だ。

 そんな風にしていながら、なお自分の大切な親であるというこのおれの葛藤を、当の本人は知りもせず階下でなにかしらの物に当たっているようだ。大丈夫、永遠といったって実際はどっちかの死までの話だ。