必殺からくり人富嶽百景殺し旅「甲州三坂の水面」
必殺って勧善懲悪にしちゃうとどうしてもまずい部分がある。それは殺しの道具を日常品にしているということで、これはまあ当時武器を持ち歩くことが出来るのは侍だけであり、町人には武器の所持すら認められなかったという当時の歴史的な背景をうまいことしたな、って感じの設定。でももちろん、真似されたりすることもあるし、第一そういった用途に使えそうな日常品で殺しというのはどうしても品がないものになる。
だから、必然的に「ありえない使い方」を必殺に出てくる彼らは多用する。結果生まれるのは一歩引いて考えると「猟奇殺人じゃん!」って感じの殺し技になるのである。「悪が悪を倒すという時代劇にはなかったタイプのピカレスクロマン」が必殺のコンセプト。勧善懲悪時代劇のプロットを使ったとしても最後に「こんなものは正義の味方は使わない!」と突っ込みたくなるような必殺技が炸裂しなくてはいけない。
この富嶽百景は、宇蔵(芦屋雁之助)の殺しの猟奇っぷりにとたんに必殺味がついてしまうのである。
頭に魚籠をかぶせる!
紐を怪力で引っ張ると魚籠が凄い勢いでくしゃくしゃにつぶれる!…頭蓋骨というか頭ごと!
悪人絶叫!
画面に写る表現としての猟奇度はピカイチさ!
この回は姥捨伝説をうまくアレンジしたストーリー。悪は本当の善を助けられないという、ほろ苦い後味が残るいかにも必殺的な脚本で、また演出も及第点以上ならもう宇蔵でさらに+1するしかないでしょ。富嶽百景ははっきり言って駄作は多いんだけれど、何か憎めないのかね、このシリーズ。こういうのがあるから。
ちょっぴり泣けそうになったが、ドンの字の部屋だったのでやめました。
※講評書いときながら一言、後半35分しか見ていません