JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

日常と非日常の揺れ動きが激しすぎるいちにち

 今朝方カミさんに起こされた。
 「なんか、隣に救急車来たとよ」
 あわただしい声。救急隊員からの声を聞くと
 「体が動かないと連絡。病院に搬送します」
 あわわわ!

 アパートの隣人は律儀そうで人のいい方だ。確か娘さんが近くに住んでいる。たまにがやがやと友人を呼んだりもしていた。
 夜更かしが多い自分のとこの雑音に迷惑をしていないかな。いや、隣の音もせいぜい壁越しにならないと気にならないからこのアパートは静かだ。最初に引っ越した時の前の隣人はミュージシャンだった。彼の吹くブルースハープの音が聞こえたことがあった。

 救急車を見送って夫婦で無事を祈った。

 昼過ぎになると隣で物音が。体調不良で「いやあ、まいったなあ」って顔で帰ってきたのでは、と期待を寄せたが娘さんと鉢合わせて事情が聞けた。
 全くよろしくない情報だった。
 「ここも、引き払うことになります。ご迷惑おかけしました」
 なんだって!!

 たった数時間での出来事。生と死、日常と非日常の境目。こんなことになるなんて。
 思えば5年前にカミさんも救急車で運ばれた。あの時を思い出して、一日沈痛な気持ちでいる。最後に隣人と話したのはいつだったろう。おすそ分けでイチゴを頂いたのはつい先日だ。カミさんの手でお洒落なイチゴスムージーに変身した。

 誰かの描いた漫画の中を生きているみたいだ。
 ページをめくるとまた別の展開が待っている。
 作者よ、俺はこんな展開なんて望んでいなかったよ。

***

 夜になりR−1ぐらんぷりを観た。
 思えばこのアパートで同棲〜結婚するまで、あまりテレビを見なかったのだけれども。寝床を一緒にするようになってからカミさんの深夜テレビ趣味に付き合わされることになった。
 その中で「あらびき団」という番組が強くインパクトがあって、そこではじめて「お笑い」のシーンに触れるようになったのだけど。そこに常連として出演はしているもののいまいち突き抜けない人がハリウッドザコシショウだった。
 その様は自分の音楽活動も一緒のようなものだ。
 いや、この思い付いた時に書くモノカキの真似事もそうか。
 「続けたからって何になるんですかバーカ!」
 そう言い切られ公私共にいたく傷つけられて以降しばらく音楽を休んでいる自分にとって、突き抜けない芸をやり続けるザコシが果たしてR−1に出てどうなる?は見物であった。

 「突き抜けない事を堂々とやる」という突き抜けた芸をやったザコシは優勝をした。あっぱれ過ぎた。あれはもうあの会場を支配した人の勝ち。一回戦、次の正統派漫談コントをやった小田さんという人が可哀想だった。脚本的に面白くって、もうちょっとメリハリがついたほうが面白かったろうに、テンションが最初から変に上がってたもの。

 ふたりで爆笑をした。思えばザコシの優勝は感慨深かった。ふたりの生活の始まりに彼が出るテレビがあった。そして今でもたまに、静岡の地方番組「しょんないTV」に彼が顔を出すことがある。こちらでもネットされているので見ることができる。
 テレビの向こうで「臆面もなくおめおめと続ける人」だったザコシが優勝かあ。
 夢のある話だった。
 まるで寓話のような優勝劇だった。
 「面白くない」と簡単に斬って捨てるやつはそう判断する自分がからっぽだといってるのと同じザ〜ンス!とおそ松さんでイヤミが言っていた。これは本当に真実。でも彼の面白さは本質的には「本当は面白くない事を心底楽しそうにやる」であってると思うから、「面白くない」も正解であるというジレンマ。

***

 終わってからふと、隣人の事を思い出した。
 この番組を楽しみにしてるかどうか、そもそもお笑いとか観る人かどうかは知らないが、もし結果を聞いたら驚くような人となりであったら、どう思っただろう。

 なんて想像をしてしまって、やっぱり今日のこの日は特異点だったのじゃないかな。
 そんな事を思ってしまった。