JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

俺の博多ラーメン道

 久しぶりに「うおお、今日は暇だあ!!」という夜になった。
 何せ、嫁のことでヒヤヒヤしっぱなし、緊張しっぱなし、友人から振られた仕事でまた緊張しっぱなし。しかし今日はカミさんが隣の部屋ですやすやと寝ているしなにより彼女の表情がとても明るい。
 じゃあ、たまにはあたためていた俺の書きたいことでも書いて残しておくかあ!
 そんな気分なのだ。

 ラーメンの話だ。

 昔大学時代、留年するほど没頭したのがZ社の住宅地図のアルバイトだ。5年やった。街歩きを知るきっかけにもなったし、バス停趣味の原点にもなった。いまCADオペをたまに頼まれでやっているのは
 「その経験が生きてバイトで入れた測量会社でCAD教えてもらった」
 のがスタート。大学は文学部児童教育学科の美術系ゼミなので、自分は
 「理系知識を博識でカバーする絵描きのCADオペ」
 という稀有な存在なのだ。日本でも需要は少ないと思う。アートをやったら楽しいのかも。

 そんな自分が気付いたことなのだが福岡という街、例えば○○丁目、と町名があるとだいたい1軒はラーメン屋かうどん屋がある。両方の時もある。ちなみにうどん屋しかない場合、まずその店は当たりである。
 地図のバイトは「ひたすら歩く」なのだが、飯時を逃す危険性を考えなくてはいけない。だから、店を見かけて11時を過ぎた頃であればもう入っておかねばならない。
 もしくは中りの店がある場合は「この時間辺りにここを通るルート」を考えて歩くというテクニックも必要であった。

 なもので福岡じゅうのラーメン屋を食べたこと、食べたこと。
 有名店近くの現場ともなれば勇んでルートを外してでも食べに行き、すわここは知られざる名店か、と思ったところで大ハズレを食ったり、逆に外見だけでここは外すべしと回避したり。

 福岡でラーメンを食べる作法はもう、
 「ラーメン一つ、カタ麺で」
 これだけでいいと思っている。そして一口目を啜り、ハズレだと思った時に初めて紅しょうがや薬味を入れる。
 美味しければ、薬味を入れるのは替え玉の時の楽しみだ。

 薄味の時。スープにエグみを感じる時。化学調味料の味しかしなかった時。壮絶に延びた麺を食わされた時。母が調理師だったので、俺は業務用パイタンスープの味を知っている。それと同じものを食わされた時。ギトギト過ぎて死にそうになった時。店を出て100点満点で大体何点ってつけながら店を出る。65点以下のときの落胆と仕事のモチベーション低下の数はそれこそ半端じゃない。

 最近は流石に自分も分かっていて、事前調査の上その店の持つ雰囲気を加味して入るように出来ている。
 そしてラーメンを一つ、カタ麺で頼み啜る。
 外れたらそれまで。

 今行列店になっていて、名前が県外に轟いてるShin-Shin。住吉のほうに開業したのを覚えている。出来立ての店に当時の職場の人々とみんなで押しかけた。普通の味だったのを覚えている。

 こないだ、久しぶりに天神の本店にライブ前に食べに行った。

 っていうか、VoodooLoungeのすぐ近くだから、いつもライブ前の腹ごしらえはあそこに決まっていたのだ。そして評価はずっと「普通」だった。

 頼む。
 啜る。
 替え玉。
 所要時間10分強。そして速やかに出る。

 いやあ、2年ぶりくらいに食べて思った。あそこってあんなに美味しかったっけ!駆け出しの頃のあのかすかに残っていたスープのエグみはどこに消えたんだ!

 最近南区の大橋に「博多玉」という新店が出来た。
 ここが本当に美味い。大橋はこれで決まり、と行った店が実はなかった。
 大橋はいいラーメン屋多いのだけど、どの店もバラエティーに富んでるんだけど、その日の気分によって違うかな・・・って店ばかり。
 この店はオープンした時から店のオーラがあった。あ、ここは外れないぞ、と。

 こないだ、カミさんと二人気落ちしたことがあった帰りにここに寄った。
 「美味いラーメン食ってこっから先を考えよう!!」

 二人、カタ麺2。
 当然替え玉。
 気落ちしてたので半分こ。
 そのときに、ああ、この店の味Shin-Shinに似てる、って気付いた。
 そして速やかに退店。
 博多にはラーメン道、みたいなものがあるのだ。確かに。
 何でこんな作法があるんだろうと考えたらふと思い出した。

 小学校の頃バス待ちでよく、街の小さなラーメン屋で食べてたっけ。
 あー、そうだ、アレだ。
 そしてそれは福岡の、どんなちいさな町にもラーメン屋があって、バスが迫ってくる頃に店を出たみたいな。
 同じ様な原体験をした人が何万人もいただろうね・・・。
 それほど沢山の福岡の町を歩いた。
 見た。
 そしてラーメン屋に一喜一憂した。
 懐かしい記憶。

 福岡出身在住の人は
 「人それぞれに俺のラーメン屋がある。共通のオススメの一店というのはない」
 と揃って口に出す。そしてそれぞれが、ラーメン道の求道者であったりする。そして我が夫婦も同じだ。