父親が夢に出てきた
昨日夢に父親が出てきた。
博多駅(と思しき設定の界隈)周辺を二人でなんだかんだとぶらり旅をした。最後は空港のお土産売り場のようなところにたどり着いた。大半は忘れてしまったが終始にこやかに暖かく会話していた。
「あれ、親父足治ってたんだっけ」
と思い出して、数秒後に
「そういや、亡くなってたんだった」
と気付いて目が覚めた。親父は脳梗塞をおこして晩年足が不自由だった。
そんな今朝方まで夢枕に立っていた亡き親父に尋ねたいことがある。
親父はゼネコン勤めをしていたのだが酒による破天荒な言動が多く、「タクシーで柳川まで行かされた」「起きたら夜行で長崎まで行った」「鉄製の玄関の取っ手を素手で折った」「そもそも仕事中に飲んでた」「その上仕事サボって福岡ボート行ってた」などすさまじいものがあった。散々問題を起こすたび、オフクロが親父の耳を引っぱる様な感じで関係者各位に謝り倒しに連れて回していた。
そんなオフクロは時々不良少女モードに入るときがあった。
変に酔っ払ってぶっちゃけ話するオフクロは妙にお姉さんっぽい感じだった。
いつぞやはタバコをふかしながら
「あはは、あたし初めてタバコ吸ってみたの!何これ、へー」
と実の息子にそんな事言われても。不味かったらしく二度と吸わなかった。
そんな年上のお姉さんになったオフクロが一度こんな話をした事がある。
「あいつ酔って柔道の技かけてくる癖があったのよ」
え、そんな情景記憶にないぞ。
「いつか反撃しようと思ったのよ。そんで、テレビで柔道の試合いっぱい観たのよ。観まくって研究して、これだってコツ、掴んだのよ。」
「」(※母はツッコミの隙も与えず喋り捲る人なのでこれくらいの俊足のツッコミ)
「あたし天才だと思ったわよ。いつものように絡んでくるわけ。締め技っていうの?そういうのかけてくるってわかったとこで、エイってやったのよ。」
「」(※前述の俊足のツッコミ)
「これがもー見事に一本背負いっていうの?それが決まったのよー!こうストーンと!それからしなくなったのよー」
…って話、本当か?
うちのオフクロは謎が多すぎて何がなんだかわからない。趣味のレザークラフトが嵩じて講師の資格まで持っていた。ある手芸屋に行って皮ひもを買ったときに「母が通ってましてね」なんて話をしたら
「あのメルヘンカービングの○○先生の息子さん!?」
と目を丸くされた。なんだその「あの秘打白鳥の湖の殿馬!」みたいなフレーズは。男塾的な世界なら富樫や虎丸が
「うおっ!相手はメルヘンカービングで戦いを挑んでるぞ!」
と叫ぶや否や
「メルヘンカービングか・・・俺の出番だな・・・」
とうちの母が出て行かざるを得ないくらいのレベルであった、とその手芸屋さんとのやり取りで理解した。
なのに突然料理に凝り始めて料理学校に行き最終的には調理師免許まで取り、フランス料理の類まで作れた。レザークラフトもしながら。すまんオフクロ、他にもまだ凝って成し遂げたものはいくつかあるが言わせてくれ。何がしたかったんだ。
親父には20代、引きこもって迷惑をかけた。すまなかった。
今年、自分はたまの石川さんと対バン、サンセットライブ(の末席)出演というなかなか常人ではたどり着けない体験をさせてもらったが、それはこの母にしてこの子であり的な活躍である。
決して親父が俺に望んでいた方向には進んでいないとは思う。
しかし無茶でピーキーなこんな母子をなんだかんだで、少し困ったような感じで温かくにこやかに見守っていた部分もあったのだなあ、と夢枕に立った父の表情を思い出して、確認した次第。南無。