嫁とぱわわぷ体操
ライブで化け物を見た。
こないだのヨコチンロックフェスに行った話。
もちろん化け物というのは、オクムラユウスケさんだ。
あまり日記を書いてないからすぐ遡れるだろう、7月に書いた話を読んでいただければわかる。そんなことがあった。何度も書くのは胸が痛くなる話。
うちの嫁はユウスケさんの顔マネが大好きだ。
しかしその7月以降、ぱったりやらなくなっていた。
ぼくら夫婦は正直言うと、気が引けていた。
ライブを観に行く事で、彼を傷つけてしまうのじゃないかと思っていた。辛い日々を思い起こさせるのではないかと。うちの嫁にだけ舞い降りた僥倖を見せ付けることになるんじゃないかと。
だが友人達の助言もあって、観に行くことに決めた。嫁はその決定を告げたとき、やっぱり少し気乗りのしない返事をした。
嫁はここのところ、元気がなかった。
ここのところ生きる気力を失ったように、自室でケータイを握り締めてソーシャルゲームをやっているさまは、見ていてずっと辛く。
ずっと昔そんな嫁を見ていた。呪詛の言葉をつぶやきながら引きこもりをしていた彼女の20代。最近の嫁の放つオーラは、あの頃のようだった。
それに引きずられるようにして、自分までも空回りを続けている生活。
ユウスケさんの出番は終電ぎりぎりだった。
僕らは真正面、かぶりつきで陣取ってた。
ライブは壮絶に笑った。
冒頭、無駄に全力で敢行した謎の体操実演。
満面の笑みで客席を飛び越え、この時点でまず本気を見た。
その後「8月のキャミソール」「テストミー!俺はどうだ!?」という選曲。
「好奇心旺盛の山城伸伍が駆け回る〜」
「BLT!バックリレロレロTバック」
「ちんちん立ってるちんちん立ってる!生きてる生きてる生きてる生きてる!」
オクムラ節は完全に健在だった。笑って、時には引いて、そして全員で「ちんちん」「生きてる」「やったあ」の大合唱。
MC。
「生きとう時間がみんな一緒と思うな!」
その意味をわかってる者たち。知らずに騒ぐ人々。
最後の「動物大図鑑」。
これも全くいつもどおり。
「野々村真のダラダラ日記」で客席大いに湧く。さっき検索かけてみたが本当かよ!!
ユウスケさんのライブはいつもやりすぎるまでやってしまう事が多い。
自分の初見のときは、演劇経験があると生命の危機を感じるようなハイテンション転倒を4〜5回繰り返した後息も絶え絶えになってステージから下ろされてた。
この日のユウスケさんももちろんそこまで激しくないにせよ、やりきった顔でギターの手を止めていた。
自分が見たユウスケさんの演奏機会で、アンコールの拍手を見たことは正直一度もない。
多分、あの日のお客さんでユウスケさんを知っていた人は。後になってこれを思い返して、おかしいと思ったんじゃないかと思うのだ。
終演後にこの事を嫁に話したら、
「奥さんが、してくれたんじゃないかな」
って言った。
アンコールの新曲は、悲しくも暖かい歌だった。
ユウスケさんごめんなさい。あんな真正面で、俺も嫁も泣いちゃったよ。
でも、歌いきってた。違うなユウスケさんは。
嫁が末期がん宣告受けた日に俺、Voodooのステージで歌ったんだった。ガンでまだ死んでもいないのに、俺はステージで泣きすぎて歌えなかった。ユウスケさんは強いな。心底敬服する。
ユウスケさんへの割れんばかりの拍手の嵐のなか、俺たち夫婦は終電の時間に真っ青になった。
挨拶もなにもできず。
嫁の顔を見ると、ぐしゃぐしゃだった。お互いそうだったろう。
結局西鉄電車を諦めて博多駅へ。地下鉄の車中嫁と話す。
嫁に生気がみなぎっていた。
ライブの話を何度もした。
「泣いたな」
「うん」
するたびに、嫁の目の奥に光がともってるのが確認できて、嬉しかった。
4度目の「泣いたな」のあとに。
「でも冒頭のあの体操・・・なんだありゃ!」
「ブゥ!」
終電1本前のJR線の車中で、嫁が吹いた。
家に帰って調べた。
なるほど、おかあさんといっしょのか・・・。
ユウスケさん、ありがとう。嫁がパワーアップしたよ!多分!!
次の朝、今まで自重していた分パワーアップしたユウスケさんの顔マネに見送られて俺は出かける羽目になった。
↓こちらに写真が。よく見ると自分も嫁も映っています。ボットンズのフーさん写す。
https://twitter.com/thevottonesfu/status/249882317378703362/photo/1
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余談だけどユウスケさんの動画はYoutubeにはあまり出てない。
もともとユウスケさん、サイトを持って器用にWebでの音楽運営をしたりする人じゃない。
で、もしこないだのチンロックでの、おそらく見た人の心のうちでいつまでも残る名演をYoutubeに出したとして、その感動は伝わるだろうか?
絶対に否だろう。Ustreamですら、それは難しいと思う。
パソコンのモニタからは、絶対に伝わらない。伝わってたまるかと思う。ほくそえみたいのです。凄かったのです。嬉しかったのです、あのかけがえのなさが。