JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

世間の人は指をさす

俳優の緒形拳さん 71歳で死去
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=628944&media_id=2

 「歳をとったらね、そういうことは増えていくばかりよ。」
 一世代上の方と飲みの席で、知人の訃報の話をしていたとき。その方が事も無げに、しかしそこはかとなく含みを持たせる表情でつぶやいた上の台詞を今更思い出す。

 大学の頃、家庭の不和や自身のコミュニケーション不全で全く孤立するように生きてた時代。悶々と自室で時代劇アワーで録画した前期必殺を見まくった時期があったなあ。もちろん緒形拳主演の白眉は「必殺必中仕事屋稼業」。林隆三緒形拳という油ギッシュなコンビが博打打ちの殺し屋を演じる粋なシリーズだ。津川雅彦がポーカーで大負けさせられたりする回はまるっきりジョジョのダービー兄戦と評判で、パクリ検証サイト(笑)もおおはしゃぎだ。

 最終回、組織は解散、仲間はほぼ全滅。追っ手から逃れる廃屋の中。配下の殺し屋であり、自分の息子でもあった政吉(林隆三)を眼前で失った女元締おせい(草笛光子)は、悲嘆に暮れ自害をしようとする。その手を制し、知らぬ顔の半兵衛(緒形拳)が叫ぶ。

 「俺たちは生き残っちまったんだ。人間生きるため死ぬため、大義名分を欲しがる。そんなものはどうでもいいんだ!!明日のない俺たちは、無様に生き続けるしかないんですよ!!おカミさん、いや、おせいさん。無様に生き続けましょうや。」

 そう言い放ち、追っ手を引き受ける形で一人その場に身を晒し逃亡する半兵衛。その後、南部牛追い唄を歌いながら自身の人相書きを破り、カメラ目線になるラストシーンで見せた、あのギラギラした目と顔。それは、自分が観ていたその当時のリアルタイムのどんなテレビにも映画にもないエネルギーに満ち溢れていた。

 そんな、自分に何かしらエネルギーをくれた友人のような親しみが沸く俳優だった。あの時話していた知人の死のように、心のしみ、もしくは大きく開いた穴として今日一日が過ぎそうだ。

 上の台詞は緒形拳特有の暑苦しい表情と、暑苦しい声、そしてどこか緒形拳特有の妙に瀟洒かつ軽妙な雰囲気でやや強めに読むとよいでしょう。
 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 最後までこの人はギラギラしていた。

 あ、日記タイトルは「必殺からくり人」での台詞。こちらは緒形(中略)、フラットで。