まず端っこから腐っていく
前日記の続き。
・「田舎の人間は本など読まない」という理由で地方の図書館を廃止。
・地方のあらゆる病院を廃止し、「ちゃんとした医師は首都にいる。病人は首都に来ればよい」
という政策を本当に実行した国があります。
中央アジア、旧ソ連から抜けた国、トルクメニスタン。
中央アジアのキム・ジョンイルと呼ばれた独裁者・ニヤゾフ大統領の施策です。かぎかっこ内は大統領による実際のお言葉らしいです。
この話をトンデモと感じる理由として、日本ではどの町にも図書館があってそれなりの教育や文化振興施策が施されていて、どんな田舎にも小さいなりにも診療所があって・・・ってことなんだけれど。
でも、今の日本はそれらはどうなんだ?という話。
平成の大合併で行政区という枠そのものを大きくし、図書館のような文化施設の箱物を設置する基準の地域の大枠を、少なくすることに成功したこの国。医師不足を理由に、地方の診療所は次々と閉鎖されゆくこの国。あれあれ?同じ事が予期せず起こってないかえ?
・・・という話を書こうと思ったんだが。いやね、それで行きがかり上このニヤゾフ大統領の人となりを読んでみたらすっごくて。
「大好物のメロンを讃える記念日を作る」
「バレエは男性ダンサーの衣装が見苦しかったので禁止」
「ガン手術したので全国民に禁煙」
「著書を聖典と定め、金曜日(ちなみに金曜日そのものが著書の名前に制定されている)は全国民がそれを読む日と定める」
「見苦しいから若者のヒゲ禁止」
「首都には至る所に大統領の偶像が建ち、首都から20キロ近くの大統領の出身地までは誰も使わない6車線の高速道路と豪華ホテルが建つ」
なのにこの国はそこそこ裕福で活気があるという。まあ、ネット上に散見される旅行記を読む限りそうだと言う話だし、何せ独裁政権下だったから本当のところは違うのかも知れないが。
何せこの国、医療費と教育費はタダだし物価は異常に安いのだそうだ。天然資源で得た外貨をそこら辺に還元、しかもソ連崩壊後、大統領就任直後にマフィアの放逐をやったので治安もよろしいらしい。
どっちが幸せなんだろうか。隣県の病院でマフィアによる痛ましい事件が起きたが、そこまで荒んできたこの国の端っこに住むよりかは、ひょっとしたら幸せに暮らせるかも知れない。ただし、その大統領は残念ながら去年亡くなって、今国は多少混乱の渦中にあるそうだが。
さらに付け加えると独裁国家らしく、秘密警察が国中を監視する国であり、一番のタブーは「大統領はヅラ」。もちろん公で発言したらしょっ引かれたのだそうだ。
仕事柄、九州のはじっこのほうの道路の沿道の写真を扱っています。
趣味もあってそういう町を回ることも多々あります。
国道沿いにでっかいドラッグストアやディスカウントショップ、たいていの店は排気ガスにまみれて真っ黒。そこに、くたびれた風情の人々やあまりよろしくない風貌の青少年が。
少し行くと、電飾に二度と電気のともらないパチンコ屋か、真逆に似つかわしくないくらい派手な看板のそれ。こんな所にある大型モニターは誰が見るんだ?何を灯すつもりだそのサーチライトは。
そんな彼らの町には、ランドマークは今やそこしかありません。
町の寂しさを、大型店舗で埋めようとするのが彼らの悪い癖。
経済効果は都会に吸い上げられるだけとも知らず。都会の文化は彼らの町には刺激的すぎるだけとも知らず。都会ばりの価格破壊は地場の商店をあっという間に駆逐し、商店街にはシャッターが並び。
おかげで商店は遠く離れたあの高い、悪趣味な色遣いの電飾の塔だけ。
もう、そこなしじゃ生きてはいけない。
そうして出来上がった、田舎型の車社会をガソリン値上げが直撃しています。どう考えても、彼らは買い物も病院も各種手続きも自家用車で用を足さないと無理なインフラの仕組みになってるんですよ。
でも彼らは政治家にお願いをする。
道路をもっと造れと、あんな建物をもっと建ててくれと。
なぜならこの地場で雇用を生み出す一番の仕事は、それらを作る業務なのですから。作った後が、ちっともその町のためになっていないということは、いくつもの町を見ればわかるだろうに。
その辺に気付いた人間は、とっとと都会へと出て行くだけ。
もう、端っこの方の町には住めない時代が来てしまったな。
・・・どうなっちゃうんだろうなあと思いながらさっき、資料整理完了。
町は醜くなり、山や海だけは何も変わらない。
柄にもなく憂国。