くだらないことに血道を上げる
「本当に私でいいのか?」
ドンの字が不意に訊いてきた。
コンビニに寄った帰り道。
彼女はパッケージに、ゲームキャラの描かれたドリンクの収集に熱を上げているらしく、何軒かのコンビニを回った。そのゲームは自分も知ってるゲームだったが、ボクにとってはそれをやってとある類のゲームは一切しなくなったくらい、あまりいい思い出はない。
何個かをレジに差しだしたようだった。目的のそれが見つかったかどうかは知らない。まあ、自分には興味がないことだ。
車中に戻って少し考えたそぶりをして、彼女が口に出したその台詞を聞き流すようにして、でもやはり気になって。
「どうしてそんなこと聞くんだ?」
「いや、さっきのコンビニで、あなたが凄くつまらなそうだったから」
いや、当然だ。
他人の趣味なんてつまらないんだ。それが好きな人のものであろうと、仕方がない。
だけれど。ボクは彼女が全く興味の持たないことに血道を上げてきた。彼女は自分の好きな音楽はことごとく「嫌い」と言ってきた。自分の出た芝居はことごとく退屈そうだったし、今の自分のバンドは一度も観にすら来たことがない。
それなのにずっと横にいるのだ。ずっと、何年も。
それに比べたら俺のそれくらい、全く取るに足らんよ。
そう言おうと思ったが、全く言葉はまとまらず。カーステでかけっぱなしの録音したラジオを聴く振りをした。
そういえばその日、彼女はQMAで宝石賢者の称号をいただいた。全くお互い、くだらないことに血道を上げるもんだ。