JIMA-DON

ニシジマオさん(自称日曜音楽家)の日常と散文駄文

荒木健太 「MSX TYPHOON」聴いた

 最近「チップチューン」とか「ゲームトロニカ」とかの枠組みってのが嫌いで。結局「たかがファミコンじゃん」と一笑に付すような輩に対して、そりゃあ枠組やらたいそうなジャンル名が振りかざせるなら、そういう連中の持つような懐疑心を多少なりと持ったリスナーへの説得力は増す。でも、時間が経つにつれてその枠組みにべったりとなって、音楽性やステージアクトをおざなりにする。新しいジャンルとやらを始めて、そうやって腐っていったようなダメな人々なんて飽きるほど観てきた。そっから先なんだよね。

 テクノミュージシャンって本当にどっちかで、次々とそんな風に寄っかかるジャンルを変える人、ずーっと同じ事しかしない人。うちら?まあ、そのときの手持ちの機材でできることしかやらない派か。ステージアクトの方の修行に身を割いたこともあるし。前者じゃ機材に金がかかってしょうがないし、後者は説得力を持つほどのレベルまで、そのジャンルを深く長く掘り下げてゆかねばならない。ボクらは音楽的には、残念ながらそれはいまひとつ怠っているのだと思う。

 で、ハイコレで惜しくも見そびれたこの人のCD聴いて思った。この人はその、とびっきりの後者だ。MSXなんて今時動かしてるだけでもクレイジー。最盛期にはゲーム音楽で、ファルコムコナミなんかが無茶をさせていた。だが彼らのやってた大半は「他ジャンルの音楽のMSXでの再現」にすぎなかった。今時、なんかじゃなくて、ここまでの時間をかけてここまでたどり着く境地というのがあるのかと驚かされた。それも、テクノというジャンルでね。

 次から次にとジャンルを綱渡りする小賢しさも、時折こんな愚直かつ強力な音楽に一発で敗れてしまうことがあるもんだねーと思った次第。自分もいろいろ考えてたけど、打ち込みのスタイルは変えないようにしよう、うん。