がんと戦うということ(3)
3.笑え、打たれようとも笑え
オカルティックな療法情報には一切触れないと誓った自分なのですが、一つだけ絶対的に信じているものがあります。
嫁の病状が余命一年以内、もしくは三ヶ月程度のものらしいとわかった時点。
ぼくは匿名掲示板の「双葉☆ちゃんねる」に出入りしていました。
札束のアイコンで「もしも1億円あったらどうする?」ってスレが立ってました。
自嘲的に「嫁のがん手術 もう笑いしか出ない」と書き込みました。名無しで。
「おいとしあきマジか」
数人のとしあき(※双葉での「名無しさん」をこう表現する)たちは誰一人茶化すことなく自分の身の上を、そして病状と気持ちを聞いてくれました。
そのうちあるとしあきがこう告げたのです。
「笑いは免疫にいいぞ、いいかとしあき、サイモントン療法でググるんだ」
ふたばの掲示板の特性上、チャットのように儚くスレッドの寿命は尽きていきました。最後まで数人のとしあきが励ましてくれたこと、そして
「いいか、嫁ガンのとしあき、奥さんを笑わせるんだぞ」
という一丸のメッセージをしかと受け取りました。
・・・これ、今となっては確かめようがないのですがノンフィクションです。
すぐに自分はその用語でググり、そして家からお笑いのDVDを持ち出して、さらにアメトーーークの面白い回DVDを中古屋で買って。
そしてうちの兄妹が車などに積むハンディDVDプレーヤーを買ってきてくれました。もう、2週間の間嫁は(まあ、元々お笑いマニアだったけど)何度も見たと聞きます。
嫁のガンが奇跡的に快方に向かったことについて、「抗がん剤が適応した」という見解を他人に語ることが多いのですが、実際のところこの「笑い」の力もでかいんじゃないかと思っています。
なぜなら、嫁と結婚して自分が最初に思い知ったのが
「こいつ本当にお笑い番組好きだなー」
ってことだったからで。自分のリストラとか、どんな辛いことが遭っても昔のお笑い番組見てゲラゲラ笑って忘れてる。そういう呑気さが嫁にはあって、自分には到底真似できない境地。
けれど、そんな嫁をもっと周囲は深刻に受け止めなさい、と窘めに来る声が上がりました。そういう意識を改めなさいと。
とんでもないことじゃないですか。サイモントン療法なるものでググってみたら、嫁が日常で行っていた「辛いことも笑いで呑気にやり過ごす境地に達することを勧める療法」だったわけで。
だからこそ、自分はとにかく嫁を「日常」に戻すことを優先にして過ごしたということ。笑って呑気に過ごさせようと考えたこと。
これがどこまで効果を発揮したかなんて確かめようがありません。
嫁のガンに関してはステージ3のD、4寸前。腹膜播種を起こして消化器系まで広がっていたと聞きます。腫瘍の一部は体力が続かず切除を諦め、抗がん剤での消滅に望みを託す。・・・というかなり絶望的な診断結果を、手術後に説明受けました。
「抗がん剤が聞きやすい体質だったからだよ」
「いや、そもそもお笑いマニアだったならガンにならなくね?」
などの野暮なツッコミはなしとして下さい。
それに、この療法の話、ちっとも怪しくもなんともないじゃないですか。笑って呑気に構えろってだけの話なんですから。
本気で、あのときのとしあきたちを探しています。
もし心当たりがある方、こっそり教えてください。バンドのホームページにメールアドレスがありますので、そちらに送っていただけたら幸いです。
嫁は奇跡的に治ったよ!!としあき!!
(※でも再発とか色々苦しい話に続きます)