仕事人講評「夫殺し」
いやー、面白かった。
下手な脚本家が作れば単純な方向に向かうしっかりしろい話を、うまい具合にひとひねりして作ったような。
この回、いつも以上にワルが悪く見えたんだけど、振り返ってみれば実際これまでの回と同じくらいのステレオタイプな小悪だったわけですよ。
日記を書くためにサブタイトルを調べたのですが、すげえな。
「夫殺し」。つまり、二人で手に手を取って罪人同士、地獄に落ちようと決心した夫婦の話ということか。
本当に罪深く、裁かれなくてはいけない悪というのは依頼人自身であるという。その強烈なスパイスが、ここまでストーリーを深くするなんて。その入念な演出描写がたまらなかった。
小五郎の正義の味方然なキャラクター的立ち回りは、「ああ、やっぱりここは正統派時代劇ファンや新規さんのために間口を広く取ってあるのね、けど納得いかねえなあ」ってスタンスで受け取っていたのですが、ここに来てはじめてそれへの問題提起が。
今シリーズトータルの縦糸は、いまだ何でこの世界に入ったか語られないが、とりあえず心のどっかに理想を抱え込んで、世間とそれの二律相反に苦しんだままの小五郎を一人前のアウトローにする話、か。
しかし結局この回でも彼はまだ甘っちょろいままでした。
もし本当の殺し屋になっていたのだったならいつものように、さぞ卑怯な手で彼を殺したかもしれない。最終回、彼はどんな顔で最後の敵と対峙するんだろう。凄く楽しみです。
あ、もうひとつ気付いたこと。
下調べの入念さは、まるでネットの掲示板などの論議をそのまま反省点に活かしたような入念さでした(苦笑)。
あとやっぱり、殺しがなー。
先日森さんと話した際「天罰屋」の壱松の三つの命殺しはアリか、アリじゃないかという話をしたのですが、ああいうバカテイストは必殺のお家芸だったはずで、いまのところ松岡のレントゲン映像の名前くらいにしか受け継がれていないのが残念です。
いや、あの殺しは素敵だよ!!もっと評価しようよ!!
っていうか必殺の3人、誰も壱松超えてねえ。ガキの頃「次はどんな奇怪な殺し技が出てくるんだ?」って感じでドキワク気分を満たしてくれるという点でね。