お見舞いに行った
戸籍謄本を取りに行った。
オフクロの出生地の欄が、朝鮮の見知らぬ土地の名前になっていた。いや、朝鮮というのは知っていたけれど、そこから再び内地に引き上げる苦労話もさんざ聞かされていたけれど。
すげえなあ、歴史が、ここにあるんだなあと思った。
その記述で垣間見る昭和史。
何を思い遠い国へと、祖父母は向かったんだろう?
別に知る気はない。
そしてその帰り、オフクロの入院先に見舞いに行った。
先客、というか。見知らぬ知り合いであろう人と談笑していた。
「あら、息子さん?」
オフクロは俺たちを指差して
「息子夫婦ですよ、次男の」
と言った。
わあ、夫婦ってことになっている。スゲエ気恥ずかしく、なんだか矢も盾もいられない気分に。
そう呼ばれた俺たちは、これからどこに向かうんだろう。
凄い不安だが、その歩む軌跡はきっと世界歴史の命じたところの何かを映すんだろうな、と思う。
書類は次の大安の日に、多分。