祖母が
さっき電話が掛かってきたさ。
「後は弟に任せた。私は今からこっちに帰るよ」
母の声が震えていた。
一報を聞いて、長崎に居たときにさんざお世話になったおばあちゃんに別れを告げたいという自分に「お前は行かなくていい!」とひどいことを強いた母親。しかし、自分は知っているのだ。
おそらく、その母も別れを惜しむまもなくそこから先のことを手伝わずに、いや手伝えずに帰ってくるだろうことを。
母には黙っていたが、その事情とやらを僕は知っている。
芝居を始めたのも実はその事情とやらがきっかけだったのである。
本音を言えば。
祖母に、芝居をやって、韓国の人を楽しませてあげられた話をしてあげたかった。
それを果たしたかった。
まだ、安否のほうは、その後の経過はわからない。話したがらない母親は声を震わせて一方的に電話を切ったのだ。
何もかも一人で背負いこんで、僕の願いを封じ込めた母親の身勝手に少し憤ったが、それ以上の憤りと悲しみを抱えた母親が今から数時間の後帰宅する。
いったい、どんな顔をして迎えてあげればいいのだろうか。
重篤らしい。
複雑な家庭の事情があり母親だけが向かった。おそらく何かがあればそのままオフクロだけがそれに参加するのだろう。
心の準備は出来ていたといえ、とても苦しい。
…という事情なのでいろんな場所の更新がとどこおるかも知れません。